大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1981号 判決

被告人 箕臼喜悦

〔抄 録〕

弁護人の論旨第一点について。

本件起訴状記載の公訴事実は「昭和二十九年三月六日午後八時三十分頃より同日午後九時頃迄の間に、東京都千代田区神田神保町一丁目六番地鈴木信三方前道路上に於て、同所に置いてあつた同人所有の中古青塗足踏二輪自転車一台(時価八千円相当)を窃取したもの」というのであつたけれど、昭和二十九年五月二十一日の原審第四回公判廷に於て、前記窃盗の訴因に「被告人は賍物であることを知りながら昭和二十九年三月六日午後八時過頃東京都神田須田町二丁目二十一番地先国電中央線ガード路上に於て、住所不詳の加藤亮夫より中古青塗自転車一台を金千五百円にて買い取り賍物の故買をなしたもの」との賍物故買の訴因を予備的に追加したことは所論のとおりである。しかし右窃盗の訴因も、賍物故買の訴因も、場所的には少しく違うところがあるとはいえ、いずれも昭和二十九年三月六日午後八時頃の事で相接着した時刻であるし、窃盗といい、賍物故買という犯罪の客体はともに鈴木信三所有の中古青塗自転車であつて、それを被告人が所持しているのは被告人自身窃取して来たものか或は、被告人が窃取したものでなく加藤亮夫から買い受けたものとすれば、加藤が之を窃取して後、被告人が之を賍物と知りつつ同人より買つたものかという差異が存するだけの事であるから両者の間公訴事実の同一性を害する虞は少しもないというべく、原審に於て窃盗の訴因に賍物故買の訴因を予備的に追加したことは毫も違法ではない。なお論旨はかかる場合に訴因を変更するはともかく、訴因の追加は不当であると主張するけれど本件に於ては単純に訴因を追加したものではなく、窃盗の訴因に予備的に賍物故買の訴因を追加したものであり、起訴について予備的訴因の記載を認めている刑事訴訟法第二百五十六条第五項との対照上からするも、予備的訴因追加を不適法とする謂れがないから論旨は理由がない。

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